『大正時代の身の上相談』 カタログハウス編

大正時代の身の上相談  カタログハウス編 (ちくま文庫) ¥714  評価…★★★★☆ <内容紹介> 大正時代の「読売新聞」に掲載された身の上相談13年分を編集したものに、編者による現代人からの視点のコメントをつけた作品。 紹介される相談のテーマは、恋愛、結婚、仕事、自らの心身について等時代に関係ない普遍的なものがほとんどで、時代背景は違っても人間は一緒だなぁと思わせられるものもあれば、大正時代ならではとちょっと驚かされるものもある。 例えば、「接吻されて汚れた私」「非処女と結婚して後悔」「人妻と兄弟として交際したい」「自分を高めるために転職したい」「身体がかゆい」などなど。 興味本位で気軽に楽しむもよし、大正人の文化と精神の考察の一助にするもよし。
ちょっとバカっぽい造り(編者のコメント内容含めて)なんですが、内容が面白いので、まぁ何とか許せます。コメント内容でイラっとくることもありますが、これがあるから大正人の文章の良さが引き立つとでも考えて広い心で接しましょう。 いや、以前から思ってるんですが、明治、大正、昭和半ばまでくらいの一般の方ってほんとに立派な文章を書かれますよね。この身の上相談でもそうなのですが、インテリ層でなくても何というか品位のある文章を書かれる。下賎な口語体を用いて下賎な内容のことを多く書いている私が言うのもなんですが、そういう文章は読んでてとても気持ちが良いものです。品位とか礼節とか恥とかいうような感覚を全ての人が普通にもっていた時代っていいなぁと思います。 しかし、本書を読んで驚嘆するのはやっぱり当時の純潔信仰ですね。私はそれを真っ向から否定するものではないのですが(意外にも^^; 詳細な主張は長くなるから割愛)、妻は自分以外の男と婚前交渉があったらしいということを夫が述べた後、自分は純潔だが「妻は前述のように砕かれたる魂です」と表現したのにはさすがに愕然としました(T_T) この身の上相談全般読んでて思いましたが、男性は性的欲望を抑えつけて情報もさほど与えられずに長年生活するとろくなもんにならないみたいですね。独善的で嫉妬深く妄想癖のある人になる傾向が強いようです。それに対して、女性はずいぶんと可愛らしく万年少女みたいな感じになるんですね。別に万年少女がいいとは言わないけど、今みたいに中学生くらいから何でもあけっぴろげみたいのは風情がなくて嫌ですよね。まぁ、素朴な人たちは今でも素朴なのだろうが。 時代関係なく面白かったのは「ミカンを一度に20個食べる夫」という相談。「私は昨年結婚したばかりで、夫の好みの食物がわかりませんが、非常に水菓子が好きなようです。今年になって五箱もひとりで食べてしまいました。」って、奥さん、何かのんきだなぁ。かわいいけど^^; そりゃあ、非常に水菓子好きだと考える他ないよね、夕食後に一度にみかん20個だもんね。 これに対しての回答がまた愉快。「そうそうミカンばかり食べては身体のためになりません。それゆえ、ミカンのほかにリンゴなども食べるようにお勧めなさい」。 素人考えで恐縮ですが、それは絶対違うと思います(笑) (2003年10月読了分)